No.229 テニスでの股関節痛 ~腕だけじゃないテニス障害~ 52歳 男性

症状

7年前に奥さんがテニスにはまったのをきっかけにご自身も5年前よりテニスを始められた。週に1回のペースでスクールに通っており特に大会等にも出場することはない。ひと月ほど前より練習後に左股関節に違和感が出始めてきた。原因として思い当たるようなことはない。最初のころはストレッチで症状は落ち着いていたが、近頃はテニスをしているとき(特にフォアハンド)で出現するようになってきた。また、痛みは重くなんともいえない痛みで部位は左股関節の後ろ(殿部)に集中している。

分析

来院される方には必ず「思い当たる原因はありませんか?」と尋ねます。しかし、往々にして無意識で体に負担をかけていることが多く、思い当たる原因のある人のほうが断然少ないのです。さて、Oさんの痛みの場所を触る前に股関節の動き(可動域)をチェックしました。股関節には前後左右とねじりの動きがあります。大きく左右差が見られたのは股関節の内旋というつま先が内側に向くねじりの動きです。左股関節のほうが右股関節よりも固いのです。そうなると左股関節を逆に外旋する筋肉の状態をチェックします。触診してみると案の定、左梨状筋という股関節と仙骨(骨盤の真ん中の骨)を連結している筋肉に緊張と押されることにより激しい痛みが生じました。また筋力の検査でも力は入りづらく、このときの痛みは何となく症状の痛みと似ているとのことでした。

施術

原因不明ではありますがOさんの左梨状筋は緊張しすぎて悲鳴を上げているようです。フォアハンド(Oさんは右利き)ではフォロースルー時に左梨状筋を緊張させつつ骨盤を安定させながら力を抜いていくという負荷のかかる状態に追いこみます。ですので、症状が誘発する事は推察されます。ただ、梨状筋が付着している仙骨にも傾きがみられましたので単に梨状筋が緊張していることだけが根本的な原因だとは言いきれなそうです。生活習慣を確認したところ疑わしきものとして「左を上にして足を組む」「左の後ろポケットにハンカチを入れている」などがありましたので治療開始と同時に中止してもらいました。梨状筋の弛緩と仙骨の調整自体は難しいものではありませんので経過は良好です。しかし、根本原因が明確になっていないため座り方や歩き方なども指導し再発することのないようモニター中です。