No.274: ピアニストの演奏中の背中の痛み

症状

1年前より、ピアノを弾いていると徐々に背中から肩に痛みが出現し、力が入らなくなり演奏が出来なくなってしまう。
特に右肩甲骨間に鋭い痛みが出現する。長い時で一日8〜10時間演奏することもある。

分析

①姿勢分析
②ピアノを弾いている時の姿勢と使い方を再現してもらう

上記より、猫背と巻き肩があり、ピアノを弾いている時に右手を左側の鍵盤に手を伸ばした時に特に痛みが増すことがわかる。また、腕を左側に伸ばす時に僧帽筋を優位に使うことが判明。前鋸筋の使い方がわからないため、自然に肩が挙上する習慣がついていた。

施術

 施術では、右肩甲骨の位置異常を正すことを優先し、その後に上腕骨の前方変位を矯正していく。2回の施術で症状緩和、但し、ピアノ長時間だと肩甲骨間に違和感出現するため、ピアノを弾く時の体幹の安定強化を行うと状態が安定する。
その後、長時間演奏や曲によっては、気になることもあることから、日常の身体の使い方修正を行う。特にカバンの持ち方を修正することにより状態は更に安定する。現在、演奏会に向けてメンテナンスしながら経過観察中。

考察:ピアニストに多い、肩甲骨が挙上してしまう状態ですが、前鋸筋が優位に働かないために、僧帽筋優位になってしまいます。そもそもその身体の使い方が体幹自体が安定しておらず、猫背になってしまっているのが発端だと推測されます。演奏のパフォーマンスは、短期的に身体の使い方を修正すると弾き辛いなどのネガティブな反応もあり得るので、まずは症状を取り除き、長期的な視野で演奏姿勢の改善に取り組むべきです。

 また、今回の女性ピアニストの身体の使い方で重要だったのが、ショルダーバックやハンドバックなどのカバンの持ち方です。これは女性に多いのですが、腕の三頭筋優位で持つ持ち方です。女性は上腕二頭筋が弱いので、上腕三頭筋の拘縮を招きやすく、この身体の使い方が上腕骨を肩甲骨窩において上腕骨を前方変位に向かわせ固定させるのです。この変位がそもそもの肩甲骨の位置異常や肩甲骨間の痛みの原因になるのです。そしてこの肩甲骨の位置異常は、その後の腕が上がらないなどの症状である、四十肩や五十肩の要因になる可能性が高いのです。

KIZUカイロプラクティック 院長 木津直昭