30〜50代に多い股関節痛(FAI:Femoroacetabular impingement)

◾️股関節の痛み

女性の足の付け根の痛みで来院される方が増えて居ます。足の付け根に何か起きているのか?
骨盤の臼蓋という受ける側と足の付け根の大腿骨頭の部分で起きています。
それは、一般的には、高齢者に多いと言われている『変形性股関節症』です。
では、変形性とは程遠い 30〜50代にも変形性股関節症が発症しているのでしょうか?

この部分には関節腔という隙間がありますが、年齢とともにこの間隙が狭くなってしまうのです。では、何歳ぐらいから始まるのでしょうか?日本人の70歳以上の95%が変形性疾患になっているという研究結果(東京大学22世紀研究ROADより)もあるように、高齢になればほとんどの方が変形性疾患になっているのです。
 しかし患者さんを見ていると、この年齢は若年化していると言えるでしょう。30〜50代の方でも股関節の異常で来院されているのです。この若年層の股関節痛では、変形性股関節症が起きているのではなく、関節間隙が狭くなってきて、その間にあるパッキンの役割をしている関節唇の損傷による痛みが多いのです。

◾️関節唇の損傷

股関節唇が損傷を受けると、痛みだけでなく、違和感、引っかかり感、股関節を曲げた状態から動かせなくなるロッキングという状態を引き起こしたり、抜けるような感じなど、股関節に“上手くはまっていない”などの症状が出ます。
日常生活では、特に曲げていて伸ばすときに起こりやすく、あぐらをかく、靴下を履く、爪を切る、立ち上がる、車や自転車の乗り降り、脚を組む等)や、特に長時間椅子に坐っている状態から立ち上がる時などに痛みが出ます。また悪化すると寝返りの際等に痛みや違和感を感じる場合もあります。このような症状の場合に、股関節唇損傷の可能性があります。但し、股関節唇損傷は確実に診断するためには股関節唇に着目したMRI検査が必要です。

🔴FAI(Femoroacetabular impingement)について

 若年層での股関節痛では、もともと骨盤側の屋根が浅い「寛骨臼(かんこつきゅう)形成不全」や、10代に激しいスポーツをしていた方に多いと言われている、股関節を曲げたときに骨同士がぶつかる,大腿骨寛骨臼(股関節)インピンジメント)などの場合もあります。このインピンジメント症候群であるFemoroacetabular impingementを略してFAIと呼ばれていて、近年着目されている関節唇障害です。
このFAIは関節唇損傷を引き起こし、放っておくと軟骨損傷が起き、最終的に変形性股関節症となってしまいます。そのため、なるべく早期に発見して対処することが望ましい疾患といえます。

FAI(Femoroacetabular impingement)には、上記イラストにあるように、その原因によってカムタイプ(Cam Type)とピンサータイプ(Pincer Type)の2種類があり、さらにその2つが複合しているコンバインドタイプ(Mixed)もあります。
 カムタイプは、10代の時に激しいスポーツなどにより大腿骨頭に出っ張り(Cam)が生じ、結果、臼蓋側と衝突が起こるものをいいます。一方、ピンサータイプは受け皿側の臼蓋に骨棘(トゲのように突き出た部分)などの形態異常があるものをいいます。ピンサー(Pincer)は「つまむ・挟む」という意味のピンチ(Pinch)から来ています。カムタイムは男性に多く、ピンサータイプは女性に多いと言われています。

余談ではありますが、私自身10代に激しいスポーツ(バスケット部・野球部・陸上部)をしていたので、レントゲンを撮影したところこのカムタイプが存在しておりました。

 

🔴FAI検査方法
このFAIは、セルフ検査ができるので、もし股関節に違和感や痛みがある方は是非お試しください。以下2つの検査方法をご紹介いたします。

◾️Patrick テスト

1.あおむけに寝て、検査する股関節の足の外くるぶしを反対側のお膝の上(大腿部)に乗せます。
2.検査者は、一方の手を上前腸骨棘(骨盤前方にある骨)に置き、もう一方の手を膝に置きます。膝を下方に押し力を加えます。股関節前部や鼠蹊部に疼痛が誘発されたら陽性とします。

◾️前方インピンジメントテスト(FADIRF テスト)

前方インピンジメントテストは別名FADIRF Testととも呼ばれ、テストの運動方向でもある股関節屈曲(Flexion)、内転(Adduction)、内旋(Internal Rotation)、膝関節屈曲(Flexion)の頭文字をとってFADIRF Testと呼ばれています。

1.あおむけに寝てもらい、検査者は、検査する股関節の足首を持ち、膝を屈曲しながら真っ直ぐ90度まで胸に近づけていきます。
2.検査者は、一方の手を90度曲がった膝に置き、その角度のまま、股関節を内転し、次に内旋します。この時に、鼠径部、股関節の前方部分に疼痛が誘発されたら陽性とします。

◾️関節唇損傷の予防法
関節唇損傷やFAIは、主に大腿骨頭の臼蓋上での前方への変位が原因とも考えられます。
この前方への変位は、骨盤の傾斜にも影響を受けます。そこで注意して欲しいのが座り方です。猫背やお尻が前に滑るような座り方をしていると、この前方変位が生じやすくなりますので、骨盤を後傾して座らないように注意しましょう!

◾️KIZUカイロプラクティックでの関節唇損傷へのアプローチ
上記予防法にもあるように骨盤の後傾を治すこと。大腿骨頭の臼蓋上での前方変位を取り除く施術を行います。またこの骨盤と股関節の連鎖を取り戻すためのトレーニングも行います。

KIZUカイロプラクティック 代表院長 木津直昭