眼球運動(eye movement)と内股歩行について

内股歩行の子供たち行っている検査で、前庭動眼反射(VOR)という反射を調べることもあります。
なぜこの検査が内股歩行に関係するのかについて解説いたします。

体の中では、
①視覚:視覚による周囲の情報
②前庭感覚:耳にある前庭半規管からの加速度や回転情報
③体性感覚:筋肉(四肢や頸部など)や腱にある深部知覚による体の傾きや筋の緊張などの情報

これらの3つの情報が、中枢(脳幹や小脳)であわさって調整されることで、 身体の姿勢や運動のバランスが取られています(平衡感覚) これらの情報にずれが生じ、一致しないと、体のバランスがうまく取れず、 自分のからだが動いてないにもかかわらず、動いているような錯覚に陥って しまいます。これが子供たちのバランス感覚の鈍化や歩き方にも影響を及ぼしていると考えています。これらの調整が上手く行っているのかを見るために行う検査の一つが 前庭動眼反射(VOR)です。

前庭動眼反射(VOR)について

 眼球運動は大きくは,身体や頭部の移動に対して視対象が眼球内の網膜の中心窩から外れないようにするための運動,視対象が網膜の中心窩に結像するための運動,およびそのほかに分類されます。
 この眼球運動で内股歩行の子供たちに実施しているのが、前庭動眼反射(VOR)です。この反射は、身体や頭部の移動時に視対象を網膜の中心窩にとらえつづけるための眼球運動であります。

この反射は、ある対象を注視している状態で頭部を動かしても対象を注視しつづけることができるかを見ています。これは,前庭動眼反射によるもので,頭部の移動方向と反対に眼球が移動することによって実現されている。その名のとおり,内耳にある前庭器からの信号に基づいて,眼球運動の方向や大きさが反射によって制御されるのです。

前庭動眼反射(VOR)検査方法

自宅でもできる簡単な方法として、子供たちに壁に貼ったシールを見るように伝えて、顔を左右に10回ずつ向けてもらい、その時にそのシールから目を離さないように伝えます。この時に立ち姿勢で背筋を伸ばし、身体も動かさないように行ってみてください。めまいや気分が悪くなるなどの症状がある場合は、無理させないでください。(目と顔が一緒に動いてしまう場合は、この反射が上手く機能していない可能性があります。但し、小学校低学年では、上手くできないお子さんも多いです。)

この反射が正常に働くということは、子供たちの姿勢制御が上手く調整できていることにも繋がると考えておりますので、このエラーがなくなるように当院では、子供たちに姿勢制御向上トレーニングを行っています。

*姿勢制御とは,人間の中枢神経系(CNS)が他のシステムからの感覚情報を調節して,適切な運動出力を生み出し,制御された直立姿勢を維持する方法を示す用語です。姿勢制御とバランスに関わる主な3つの感覚システムは、上記に列挙した①視覚②前庭感覚③体性感覚です。

文責:木津直昭