No.223 産後の腰痛 ~非典型的な骨盤の歪み~ 32歳

症状

Aさんは産後1ヶ月ほどしてから腰痛が出現した。最初は腰の中央付近だったが、徐々に右のお尻(殿部)にまで痛みが拡がるようになった。駅前にあるクイックマッサージに行ったところ痛みがさらに強くなってしまった。特に前傾での姿勢になると鋭い痛みが走る。そのため、授乳やお むつ替え、沐浴などの育児全般に支障が出るようになってきた。産後のガードル・骨盤ベルトはたまにつけていた。

分析

妊娠・出産時には骨盤をゆるませるホルモンに加えて分娩の個人差が加わり、骨盤の歪み方が一般の人と比べて特殊なパターンになりやすいのです。Aさんは普通分娩でしたが微弱陣痛でお産が長引いたそうです。それが原因とは限りませんが、やはり通常とは異なる歪みを引き起こしやすくはなります。症状が出ている右殿部にはそれほど緊張はありません。むしろ右腰周辺には非常に強い筋肉の緊張がありました。それに加えて、右腰だけがお腹を前に突き出す(妊娠中の姿勢)ような反り腰になっていました。さらに腰を反らす方向に力を加えるとAさんの腰痛は再現されました。骨盤の関節(仙腸関節)は症状のある右側はとてもスムーズに動いており、逆に症状の無い左側の方がズレて固まっているよ うでした。推測される状態としては、右側 の骨盤(仙腸関節)はゆるくグラグラになってしまっており、不安定性を補うために筋肉の緊張が引き起こされているようです。また、その緊張は代償的に反り腰を引き起こしてしまっていました。

施術

腰の筋肉の緊張は不安定な骨盤を守ろうとしているものです。なので腰の筋肉にはあまり触れませんでした。おそらくクイックマッサージで悪化した理由はここに触れてしまったためだと思われます。骨盤は左右で一対の関節ですので、一方が固いとゆるい側はもっと動かなければならなくなってしまい ます。ゆるい側にまで刺激にならない様に左側の骨盤を矯正しました。また、ゆるくなっている右側の骨盤は安定を促すように関節から神経系に刺激を 加えました。治療直後から反応は良く、前屈による痛みは大きく軽減しました。その後、3回程の治療で症状はほぼ無くなりました。