No.215 ピアニストの左肩の痛み~腱板炎 34才 女性 ピアノ教師

症状

2週間ほど前から左肩関節に痛みを感じる。腕を挙げたり、後ろに手を回すなどの動作で痛みを強く感じる。最近は左手をよく使うピアノの曲目を集中的に練習しており、それから痛みは強くなった気がするが、以前から肩に違和感はあったとの事。病院の画像診断で左肩関節の腱板炎を指摘されている。

分析

左肩関節のROMでは伸展と水平伸展が著しく低下しており、外転は120度程で肩甲上腕リズムの崩れが確認される。触診ではローテーターカフの緊張が見られ、肩峰には鋭い圧痛が存在する。左の肩甲骨は挙上し周囲筋群の癒着も確認されることから、肩甲胸郭関節の機能障害により肩甲骨の連動が崩れ、腱板に負担がかかっている可能性が高いと判断した。

施術

初回の治療では左肩関節の炎症を抑えるためアイシングを行い、その後関節へモビリゼーションを加える。肩甲胸郭関節や胸椎に対しては癒着を起こしている周囲筋群へのグラストンテクニックとアジャストメントを行い、肩関節への負担が軽減するようにアプローチする。3回程同じ治療を続け炎症が治まってからは、ローテーターカフに対してグラストンテクニックを使用し筋膜の癒着にアプローチ。10回程の治療で痛みもなく100%のROMが得られた。
今回の症例ではピアノ演奏による左手の酷使で腱板炎が生じたと思われますが、通常それだけで肩の障害が生じることはほとんどありません。原因は胸椎や肩甲骨に見られた機能障害にあった可能性が高く、以前から左肩周囲のバランスは崩れ筋肉の癒着が進んでいたため腱板炎につながったと思われます。この筋肉の癒着は強くなると通常のマッサージやストレッチで改善することは無く、グラストンのツールでその癒着をはがす必要があります。なかなか改善の見られない症状をお持ちの方は、この癒着が原因となっている場合がありますので、一度ご相談ください。