No.180 コントラバス奏者の背部痛 38歳 男性 オーケストラ所属

症状

コントラバスの演奏中に生じる背部から腰部の鈍痛を訴えて来院。痛みは1ヶ月前から続いており、徐々に悪化してきている。最近は車の移動でも痛みを感じる。マッサージへは何度か行ったが変化が見られない。特に思い当たる原因はないとの事。

分析

姿勢検査では、右上部僧帽筋や肩甲挙筋の癒着が強く右肩が左肩に比べ上がっていた。また胸椎後彎(猫背)の増大と脊柱起立筋の緊張が強く診られた。演奏のフォームをチェックしたところ猫背の状態でとても窮屈そうに見られ、下部僧帽筋が働いていない。フォームを正して演奏しているとすぐに胸腰部(背部)が疲れ鈍痛が出てくるとの事。 腕の動きも不自然で最近では肩の挙げ辛さも感じているとの事。

施術

初回は右肩甲帯、右上腕の関節のバランスを整えると共に過剰な胸椎後彎に対してアプローチした。癒着を起こしている右上部僧帽筋や肩甲挙筋にはグラストンテクニックを行う。初回の治療で痛みは8割改善が見られた。現在は自宅でのエクササイズを行い、経過観察中。
今回の問題は肩甲帯と胸腰部の機能障害に原因があったと思われます。コントラバスを演奏する正しいフォームは、胸腰部から頚部にかけて軽く屈曲し、肩甲帯は下部僧帽筋によって引き下げられ、肩の力を抜き腕全体で弓を引きます。しかし右肩甲帯の筋肉が癒着し肩の挙上がされたままだと、代償的に胸椎を過剰に後彎させ(猫背)腕の力で弓を引くことになり、胸腰部への負担は増大します。そのため胸椎から腰椎の機能障害が引き起こされたと考えられ、演奏や車の移動で胸腰部起立筋の負担が大きくなると痛みが生じていたと考えられます。
また元々はこのようなフォームではなかったらしく、話を聞くと最近デスクワーク(パソコン作業)が多く右首肩にコリを感じていたそうです。そのため デスクワークの姿勢が原因となり筋肉の癒着が進み、演奏フォームを崩していた可能性があります。この筋肉の癒着はグラストンテクニックではがす必要があり、手のマッサージによるアプローチのみでは大きな変化は得られません。楽器を演奏される方でデスクワークの多い方はグラストンテクニックが必要かもしれませんので、一度ご相談ください。