No.172 テニス後の腰痛 32才 女性 丸の内勤務

症状

7年前より週末にテニスをしている。 (右利き)半年前から、テニスのレッスンを受けた後やゲームをした後に腰痛(部位は右の臀部)が出るようになる。毎回出現するわけではなく、その時々で出たり出なかったりしていた。そのため、特に気にしてはいなかった。しかし、2週間前からはテニス後の腰痛がそのまま持続し、痛み(深く滲むような痛み)も悪化してきた。テニスをしなければ少しずつ軽減しているようだが、ストレス解消のためテニスは続けていきたい。2日前にテニスをしてから更に悪化した。

分析

初回検査時、立った姿勢では目立った異常はなかった。仰向けになってもらったところ、右足のつま先が外側を向いていた。右臀部の触診では筋がロープ状に緊張し激しい痛みがあった。 臀筋群の筋力検査にて、右梨状筋の筋力が著しく低下し若干の痛みが出現した。股関節は内旋(つま先を内側に回す動作)の可動制限があった。骨盤は体の中心線からわずかに右側に歪んでいた。腰部の検査にて、痛みは無いが胸椎と腰椎の移行部付近に可動制限がみられ、周囲の筋にも過緊張があった。痛みを出していたのは梨状筋という股関節と骨盤をつないでいる筋肉でした。触診と筋力検査でも梨状筋が疑われましたが、仰向けでつま先が外側を向いた状態からも梨状筋が短縮していることが考えられました。

施術

本症例では、痛みの原因は梨状筋ですが筋の異常を作っている原因は他の部位にありました。右股関節と胸腰移行部(胃の高さの背骨)の可動制限です。テニスが症状誘発に大きく関わっているという事と上記の可動制限を重ねてみると、フォアハンドストロークにおける障害が考えられます。フォアハンドストロークの上半身を捻る動きは、股関節、骨盤、腰、肩、肘、手首と体全体を使っています。彼女はこのうち、股関節・骨盤・腰に問題があったため、その足りない動きをどこかで補わなければならなかったのです。それが、梨状筋です。地面をグリップした足が回旋力を腰に伝える際、動かない右股関節を調整・安定させるるために必要以上に緊張し、さらにフォロースルーにおける上半身の捻じれは胸腰移行部の制限により固定されているため、安定を強いられていた梨状筋に更なる収縮を要求し回旋力を補います。痛みは筋緊張によるものですので、緩めれば一時的に回復します。
そこで、治療目標となるのは正常に緩んだ状態が維持できることです。まずは症状のある部位よりも原因となっている部位を積極的に治療していきました。初回の治療で80%の疼痛減少がみられ、梨状筋の検査でも大きな改善がみられました。しかし、腰と股関節の可動制限が改善するまでには4回の治療が必要でした。治療期間中は痛みは80%の減少を維持したまま少しずつ改善していきました。可動制限のない状態を維持できるようになってからは治療間隔を広げ、6週間の治療間隔でも維持できるようになり症状も出現していません。現在はテニススクールにてフォームの改善に取り組んでいます。