No.166 自転車による腰痛 33才 男性 大手町勤務

症状

3ヶ月前より健康のために自転車(ロードバイク)通勤を始めた。(片道30分) 2ヶ月くらい前から腰に違和感が出るようになり、自転車を購入した店にてサドルとハンドルの高さを再調整した。 調整後は症状がやや減ったように感じたが、1ヶ月前から腰の違和感が再発。 2週間前から痛みに変わり、現在では右側の腰に鈍い痛みを感じている。ひどい時には体の奥の方で締め付けられる ような痛みが殿部まで広がる事もある。自転車に乗ると10分ほどで痛むようになってしまったため、 自転車(ロードバイク)での通勤は諦めて電車を利用している。

分析

初回、姿勢検査では大きな崩れはなく、前屈や腰を反らすなどの動きも正常だった。痛みのある部位を触診してみると 多少緊張があるものの症状を誘発するほどの異常とは感じられなかった。その他の部位で緊張があったのは大腰筋 と呼ばれる腰部深部の筋肉で、触れてみると痛みがあり筋力も著しく弱くなっていた。骨盤の動きは、症状が出て いる右側に大きく動揺性が診られた。

施術

治療では、骨盤を安定させることにより筋負担のアンバランスを無くし、痛みの原因となっていた大腰筋の緊張を 緩めていきました。同時に自宅でできる大腰筋のエクササイズを実践してもらい、自転車通勤にも耐えられる筋量(安定性の確保)を目指しました。 3回目の治療(1週間後)で痛みは消失し、大腰筋の筋力も回復。5回目の治療(2週間後)では骨盤も安定し、 週の後半のみ自転車(ロードバイク)での通勤を再開してもらいました。4週間後には完全に再開し、約2カ月の経過観察を経て完治を確認しました。
ペダルの動き方はクランク運動であり、繰り返し左右対称に行われます。骨盤の動きというのもこのクランク運動と同一のもので、 下肢から伝わる運動は骨盤で再びクランク運動に変換されます。ペダルのクランク運動は動力に変化しているだけですが、 骨盤では下肢へ力を伝えつつも小さなサドルの上で上半身を安定させながら支えているのです。
今回の症例では、安定と運動を両立できるだけの十分な筋量がなかったために右側の大腰筋に負荷がかかり痛みを誘発してしまった のだと思われます。おそらく以前からも骨盤が右に開きやすい傾向があり、自転車の反復運動によって不安定性が増したことも一因となっていたと考えられます。