No.263 尾骨骨折後の尾骨痛

症状

 30代の女性患者さんは3ヶ月前に階段で転倒して、階段の角にお尻を強打し、その後も改善せず辛いお尻の痛みに悩んで来院されました。椅子に座ると尾骨が痛み、座っていられないとのことでした。
整形外科での検査結果では、『尾骨骨折』との診断で、痛み止めを処方され服用している状態でしたが痛みが改善せずに最近は腰も痛みが出てきたとのことでした。日常では、座ったり上向で寝たりすると尾骨痛のため日常生活に支障をきたしておりました。

分析

 検査をすると、身体を前に曲げたり、後に反らす動きで腰部に痛みを発症していました。また、椅子に座り腰を丸めると尾骨が座面に当たり、尾骨周辺に痛みを感じていました。この状態だと痛むので、椅子に座る時には背筋を伸ばして座っていたようです。また、尾骨の痛みを軽減するためにこの3ヶ月間はドーナツクッション(真ん中が空いているクッション)に座っていたようです。
患部の尾骨周辺には、圧痛があり、上向で寝ようとすると尾骨が当たり痛みで膝を曲げないといられない状態でした。

施術

 尾骨骨折自体は、3ヶ月の期間が空いているので修復されています。尾骨骨折患者の多くは、この尾骨自体よりも他の組織に問題を併発するケースが多く、患部自体は触らずに、周辺の組織、特に腰椎から仙骨にかけてのアライメントを矯正していきました。また尾骨に対する圧迫を取り除く目的で、抗重力セラピーによって身体を縦方向に伸ばす施術とトレーニングも行い、一回の施術で上向寝が可能になり、その後、週に一度の施術を3回行い、椅子に座っての痛みも改善しました。その後、2週間に一回の施術で経過観察行い、上向寝の痛みや椅子に座っての痛み、そして動きでの痛みも全て改善し、ドーナツクッションも必要ではなくなりました。その後は、骨盤後傾を改善するためのセルフトレーニングと抗重力トレーニングを自宅で行ってもらっています。

考察:
 尾骨骨折では、転倒した時にお尻や尾骨への衝撃が仙骨と腰椎にズレを起こさせます。実はこの腰椎と仙骨のズレを正すことにより症状は軽減し、座っていることも可能になります。安易にドーナツクッションなど敷いて、尾骨が当たらないように長期間使用していると腰椎や骨盤のゆがみがより大きくなりその他の弊害を生むことも少なくありません。(骨折の急性期や産後のお尻の痛みなど、傷が治るまで短期間なら使うならいいのですが、長期間使用はNGです)
尾骨骨折されて尾骨痛に悩まされている方々は、辛い症状に対して患部=尾骨を治さないといけないと思いがちです。
しかし、この尾骨の打撲や骨折による患部の状態も重要ですが、その患部(尾骨自体)は1−2週間安静にし日が経つにつれ炎症も引いて痛みも軽減することが多いのです。その後も痛みが続くケースは、その尾骨の状態よりもその上にある仙骨や腰椎への圧迫により症状が発症しているケースが多いのです。

院長 木津直昭