No.161 ヴァイオリン演奏と肩こり 20歳 女性 ヴァイオリニスト

症状

慢性的に続く肩こりと頭痛を訴えて来院。ヴァイオリンを学ぶためにヨーロッパ留学をしている。幼い頃から肩こりがあるが、最近症状が徐々に悪化、頭痛まで生じるようになっている。肩こりは常に感じており、特にきっかけもなくズキズキとした拍動性の頭痛が起きる。また最近特に肩こりのため演奏時にヴァイオリンの位置が下がりやすく、うつむいた様な姿勢で演奏をしてしまう。マッサージもたまに受けるが改善が見られない。

分析

初診時、強い頭部の前方移動が確認され、はっきりとしたストレートネックが存在した。上部頚椎の関節は圧迫され、頭部が前方へ移動しているため左右の上部僧帽筋はそれを支えなくてはならず常に緊張をしている。 ヴァイオリン演奏時の姿勢をチェックしたが、顎が上がった状態でヴァイオリンを支えていた。さらに胸椎の後方変位が大きいため背部の筋肉を十分に使えず、ヴァイオリンを支持しにくい状態であった。

施術

治療では前後のバランスを整えるため、上部頚椎の関節の圧迫を改善させ、下部頚椎から胸椎にかけては前方への可動性を加えた。それに伴い、癒着している上部頚椎の筋群や前胸部の筋肉に対してはグラストンテクニックを行う。 この治療を4回継続した頃から頭痛は生じなくなり、ヴァイオリンを高く上げて支持するのも楽になったとの事。留学でヨーロッパへ戻るため、次回の治療まで胸椎に前方への可動性を加えながら行うエクササイズで補助をするように指導をした。

今回のケースでは、ストレートネックから来る全身の前後のバランスの崩れにより問題が生じていたと言えます。ヴァイオリンは演奏するときに、胸を張るようにしてなるべく楽器を下げないように保持することが大事ですが、今回のように顎が上がり、背部の筋肉が働きにくい状態ではこのような姿勢の保持は困難になります。仮に無理をしてヴァイオリンを高く保持したとしても首や腰の関節を痛めることにつながります。
ヴァイオリンを下げずに支持する正しい姿勢は、上部頚椎の関節が開き頭部への血液循環がスムーズに行われ、胸郭も広がるため呼吸がしやすくなり集中力の持続へつながりますが、この姿勢を維持するためには整った体の前後バランスが必要になります。 ヴァイオリンに限らず様々な楽器の演奏には特異的なフォームがありますが、そのフォームは整った体軸のバランスがあって初めて正しく構えることができます。今回のケースのように、慢性的な痛みがある場合は体軸のバランスが崩れ、強い筋肉の癒着が生じているケースがほとんどです。この筋肉の癒着はマッサージで改善することはなく、グラストンテクニックが必要になります。長期間に渡り放置していると、椎間板ヘルニアや四肢の神経症状などに進行することもありますので早めにご相談ください。