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アスリートに重要な「脱力」

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 メジャーリーグ・ダルビッシュ有投手(テキサスレンジャーズ)の快投が続いています。観戦していると嬉しくなるし、本当に頼もしい限りです。そんな中、先日ハーラートップの6勝目をあげた試合で「脱力投球」という記事がありました。試合後のコメントでも、「投球フォームは力を抜いた。軽く投げている感じ」と話していました。
 この「脱力」ですが、アスリートにとってはとても重要です。以前このコラムでも「肩の力を抜く」大切さをお話しましたが、特にスポーツ選手では、欠かせないことなのです。投球で大切なのが、下肢からスタートして体幹、そこから「しなるように肩―腕―手首へと連動」が必要になります。安定した下肢から体幹があってこそ、この「脱力」ができるのだと思います。
その「脱力」のスペシャリストが日本の球団にもいます。それはヤクルトスワローズの宮本慎也選手(上写真)です。(ちなみに僕はヤクルトファンではないですが)先日の2000本安打達成もすばらしいのですが、なんと言っても連続守備機会無失策の日本新記録を塗り替えました。安定した下半身がそれを可能にしているのだと思います。僕が言うのも何ですが、見ていてエラーしそうにない(ヤクルトファンではないので)、本当に芸術の域にある守備を見せてくれます。
そんな宮本選手の「肩の力の抜けたすばらしい打撃と守備」を可能にしているのが、「丹田」の強さではないでしょうか?
では、なぜ丹田に力が入ると「脱力」ができるのでしょうか?その答えは「筋バランスの拮抗」が重要な役割を担っているのだと思います。
例えば、バレエにおいて骨盤を立てることが重要ですが、それには「丹田」を意識した筋バランスの拮抗が必要になります。これが引き上げ動作につながり、体幹が長軸(たて)に伸びることができるのです。その時に同時に起こるのが肩甲骨の下制です。この連動した筋バランスにより、しなやかな四肢の動きが可能になっているのだと思います。それが丹田を使った時に起こる「肩の力が抜ける」現象なのです。これが「脱力」なのです。
逆に言えば、この丹田に力が入っていない拮抗した筋バランスでない時には、実は肩に力が入ってしまうのです。こうなるとパフォーマンスは落ちるし、障害を生みやすいのです。それが「脱力」の反対である「緊張」状態なのです。
次回は、この「筋バランスと障害の関係」についてお話します。

以前、取り上げた「肩の力の抜き方」についてです。
「肩に力が入る・肩の力を抜く」

集中と焦点を合わせることについての違い

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 先日、バイオリンをされる患者さんに本を頂きました。その一節にあった興味深い文章についてご紹介させて頂きます。
(深澤さんありがとうございました!)
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 年少の生徒が先生に「ヴィブラートに集中しなさい」と言われた時の様子を注意深く観察すると、生徒がヴィブラートに集中すればするほど、ヴィブラートはぎこちなくこわばったものになります。
 集中とは、生徒が先生から求められるもののうち、最も悪いことの一つと言えます。集中は注意する能力を制限してしまうからです。注意力が狭まると、身体まで萎縮してきます。顔をしかめたり、筋肉が不必要に緊張したり、精神的に疲労を感じたりするのは、集中につきものの弊害です。こうならないためには、「集中」ではなく「焦点を合わせる」ことを心がけると良いでしょう。この生徒がヴィブラートに集中するのではなく、焦点を合わせることができれば、ヴィブラートは周囲の状況を含んだ現象の一つとなり、何もそこから締め出されたりしません。
*ヴァイオリニストならだれでも知っておきたいからだのこと」
ジェニファー・ジョンソン著(春秋社)より
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 この文中にある「集中と焦点を合わせることについての違い」ですが、臨床の場で思い当たることがたくさんあります。治療の中でアスリート(演奏者・ダンサー・ゴルファーなど)の方々には、修復過程でどうしても必要なフォームの修正時に、その悪い部分を指摘してしまう傾向があります。そうすると本人は、その部分に集中してしまう為、他がおろそかになってしまうのです。「この焦点を合わせる」必要性を強く感じるのです。これは、一般の方々にウォーキングを伝える時にも同様のことが言えると思います。「足に気をつける」「肩甲骨を意識して」「骨盤を意識して」などなどです。
早速、来月(3月20日)、二子玉川で骨盤矯正ウォーキングの講義を担当するので、生徒さんに、「焦点を合わせること」の大切さを伝えていきたいと思います。
東急セミナーBE 1周年記念:
http://www.tokyu-be.jp/seminar/2012010005XD57001.html

*演奏者の行っているパフォーマンスは、僕の中では、芸術家でありアスリートだと思っています。

静の姿勢と動の姿勢

姿勢については、当院のコンセプトである「プライマリーケアから予防そして姿勢改善へ」を臨床開始以来25年間、治療中、姿勢シンポジウム、マスメディア通じて、訴え続けて参りました。何度も聞いて耳が痛くなっている患者さんもいらっしゃるかもしれません。なぜ「姿勢」なのかと問われるとすれば、その回答は「姿勢改善」が究極の予防に繋がるからこそなのです。その大切な姿勢ですが、ここ数年来、注視しているのが、「動きの中の姿勢」についてです。

 そこで今年から一般的に言われている姿勢を「静の姿勢」、また身体を動かしている時、スポーツしている時の姿勢を「動の姿勢」と名付けてみました。静の姿勢を気をつける時に意識が集中するのは、体幹です。頭から吊られるようにするとか、丹田を意識して座るとか、これら「静の姿勢」で大切なのは身体の軸です。

 では身体を動かす時はどうでしょうか?まず歩く動作では、足が関与します。パソコン使っているのは、手ですね。何か持つのも肩や腕です。ランナーやバレエダンサーは、足と腕を同時に動かします。そうなのです。「動の姿勢」では四肢がキーになるのです。この体幹と四肢との関係が「動の姿勢」では重要なのです。
 この体幹と四肢との関係、具体的に言うと体幹(脊柱)を中心とした肩甲骨と上肢・骨盤と下肢との連動です。その脊柱には脊髄神経が存在していることも忘れてはいけません。
  実はカイロプラクティックで行っている治療では、この「動の姿勢メカニズム」の修復作業が多いのです。修正できると日常生活で起る、歩行での痛み、腰を曲げた時の痛み、靴下履くときの痛み、腕を挙げるときの痛み、寝返りの痛み、様々な不定愁訴が改善できるのです。 もちろん各種スポーツで起る問題も同様です。どこか痛める時は、このメカニズムが壊れた時であり、パフォーマンスを向上させるにはこのメカニズムを強化する必要があるのです。
今年は、この「動の姿勢」についての重要性と改善法について更に研究を進めていこうと思います。

次回は、具体的な「動の姿勢」について触れてみます。

姿勢に表れるサイン

「姿勢には気をつけたい」「良い姿勢でいたい」「姿勢が悪いとカッコ悪い」「子供の姿勢は気をつけてあげたい」等、自分の姿勢や子供の姿勢について興味ある方が多いと思います。 ここ最近の健康志向からもその傾向が強くなっている気がします。
 そこで今回は、姿勢と痛みの関係についてお話します。皆さんが「正しい姿勢」を実行するとすぐに疲れてしまったり、長く続けられない事、経験したことないですか?実は、正しい姿勢をしようと思っても身体がその姿勢を嫌がっている場合があります。
 例えば、姿勢を正そうとすると腰が反ってしまい腰が痛くなるので、丸まって仕事をしている人も多いと思います。今度は丸まっていると顎があがり後頭部が圧迫されて頭痛・首痛・肩こり、または胃が圧迫されて消化器系の症状が出現する人も少なくないのです。身体が歪むと防御的に筋や筋膜が緊張して伸びなくなります。原因が残ったまま無理に伸ばそうとすると、痛みや張りを発生させます。

では、その悪い姿勢が楽な人は、姿勢を崩していればいいのでしょうか?
それは間違っています。これらは「身体から発生されているサイン」なのです。その原因は背骨や骨盤、筋肉や筋膜、または足の関節にあるかもしれません。これらの原因を取り除くと、神経や血管の流れが改善され、筋や筋膜の緊張はなくなり、よい姿勢が自然に楽にとれるようになるのです。

「姿勢に表れるサイン」の一つとして寝る姿勢があります。上向きで寝れない、寝にくいと感じていたら、何かしら身体に変化が起っていると考えていいと思います。
また、子供が姿勢が悪いからと言って、簡単に決めてかからないようにしてください。何か原因があるのです。また痛みがないからと言って安心しないでください。いくら注意しても姿勢が悪くなってしまうのは、「身体からのサイン」が出ている可能性があります。

石川遼選手の姿

全英オープンゴルフが始まりました。今年はあのタイガー・ウッズ選手と石川 遼選手が一緒にラウンドすると聞いていたので楽しみにしておりました。
その遼くんですが、タイガーウッズとラウンドするにあたって何を見てみたいかの質問に対して「タイガーの歩き方を見てみたい」だったのです。
歩く姿勢には、その人の体幹が表れます。ゴルフのような軸を大切にするスポーツでは、すべてが表れる"姿"なのかもしれません。プレースタイルを見てみたいではなく、そんな回答をした遼くんに驚嘆してしまいました。
今回の全英オープンは、激しい雨と風が遼くんに試練を与え、残念ながら予選落ちしてしまいました。ただ、あのアグレッシブなプレースタイルは見る者を虜にしてしまう”姿”がそこにはありました。