足底内側縦アーチとインソールの効果についての疑問

足底内側縦アーチとインソールの効果についての疑問

外反母指・巻き爪・膝痛などのお悩みを抱える女性が多く来院されます。ただ、この足の障害において高価なインソールを使っている方が多いのですが、少し疑問が生じます。
確かに足の内側縦アーチの減少は、中足部においての過度の回内(pronation)を生みます。
結果、運動連鎖によって、足関節、膝や股関節、腰部への悪影響も起こります。

その内側縦アーチをインソールによってサポートするという考え自体は、ある面では効果的だと思います。

ここで言うある面というのは、歩行相の中で内側縦アーチがいつも同じである場合です。

そこで、以下の疑問が生じます。

このアーチが歩行の中でどのような動きになっているのか?

左右の足のバランスでどうなっているのか?

腰部・骨盤などの状態は?

先ずは、実際の歩行相において、足関節のメカニズムを理解する必要があると思います。

以下は、歩行周期の立脚相(0〜60%)を通した内側縦アーチの高さの%変化を現したもの。
遊脚相の非過重の足部アーチの高さを100%としている。赤の陰影の領域は、歩行の踏切期を示す。

筋骨格系のキネシオロジー Donald A. Neumann 著(医師薬出版)より

着地してから、後足部から回外し、踵が離れる(踵離地期)から回内して行きます。この間に内側縦アーチは、85%〜100%のレンジの中で変化しているということです。

 この立脚相での、足の動きを模型を使って再現したのが、以下の動画です。

歩行相においての足関節のメカニズム動画

 歩行の一歩一歩で、このアーチが変化していることが、インソールに対しての疑問であります。
もちろん、この歩行相に対応して、常時インソールに変更を与えて行ければ、いいのかもしれません。しかし、僕が実際に施術をしていて実感しているのは、人間の重心は左右に偏っている方がほとんどです。重力下で生活しているので、その左右のアンバランスは、先ず、地面から足関節が感知します。この足裏で感知した情報に反応して、回内・回外などを不随的に行っています。その反応が間違っていたり、遅かったりした場合に捻挫などの障害になるわけです。
そして、背骨・骨盤の状態もこのバランスに大きく影響しています。実際に背骨・骨盤の状態を整えれば、足の回内・回外などの動きが改善したりもします。

結論として、内側縦アーチに関しては、もちろん持って生まれた解剖学的な構造(遺伝)もあります。そして、アーチは歩行相の中で柔軟に変化対応します。また、それぞれ人によって原因は、違う訳で一概にどこに何が起きているのか、インソールが効果あるのか?など正解はわかりませんが、ある足の障害に対応し、根本から解決するためには、インソールだけに頼るのではなく、その人の歩行相や歩き方、そして、骨盤や背骨全体の評価が重要だと思います。そして、インソールが逆効果になる可能性もあることを付け加えておきます。

 また、インソールを使用している方で、アーチのためのエクササイズとしてタオルギャザーという(指先でタオルを掴んで手前に手繰り寄せる)運動が処方されている方がいらっしゃいますが、これも疑問です。このエクササイズは、足指を動かすということに関しては効果があるかもしれませんが、この運動を座位で行おうとすると、前脛骨筋などの足の甲を上げる筋群を使ってしまうことが多いのです。結果、実際の歩行時の内側縦アーチの構造には、大きな効果は期待できないかと考えます。

文責:木津直昭