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肩甲骨と骨盤の関係

最近、患者さんから肩甲骨や骨盤に関する質問をよく受けます。マスコミ等で「肩甲骨や骨盤」に関するエクササイズが多く取り上げられるからなのでしょう。そこで今回はこの関係についてお話しいたします。

皆様も、肩甲骨の内側辺りに痛みや凝りを感じたことがある方は多いと思います。この肩甲骨辺りの痛みは、実は、骨盤の歪みに影響されることが多いのです。例えば右下肢からの力が骨盤に正常に伝わらなければ、肩甲骨の動きも阻害されることになります。この場合、特に反体側の肩甲骨内側に痛みや凝りを感じることが多いかもしれません。これは下記の図にあるように”身体は船のマスト”のような構造になっているからなのです。
肩甲骨と骨盤は分けて考えるのではなく、連動する関節として捕らえ“ケア”や“エクササイズ”を行うべきなのです。(全身が繋がっていると考えるのがベストです)

(以下 医歯薬出版 I.A.KAPANDJI著 カパンディ・関節の生理学より抜粋)


体幹は、船のマストにみなすことができます。
このマストは、骨盤に基礎を置き、頭の方へ伸びて、肩の高さで帆を張る為に 横に広がり、主たる帆桁である肩甲骨を支えている。マストを骨盤に連結するための支えとして 作用する靭帯や筋肉のロープが、脊柱のあらゆる部位に存在する。
左右対称的な肢位がとられる際には(図1)、両下肢に均等に力がかかっており、マストはまっすぐでかつ垂直である。また一側下肢に体重をかければ(図2)、骨盤は対側に傾斜し、脊柱は曲げられてしまう、すなわち、まず最初に腰椎部では非荷重下肢のほうへ向いて凸となり、胸椎部では凹となって、最後に頚椎でもう一度凸となる。この際、筋組織が平衡を取り戻すために自動的に作用する。

・「骨盤の開き」考察①

・「骨盤の開き」考察②

開脚と骨盤の開き

バレエの開脚で股関節を痛める方がよく来院されます。今まで痛みがなく開脚できていたのに、痛みや筋肉の張りのために以前ほど開脚できなくなったと訴えます。バレエではこの動作は基本ですので、様々な動きやポーズで支障をきたし、身体全体のバランスを崩してしまうのです。
この症状が出現したら注意が必要です。なぜならこの症状は、身体が「開脚しないでほしい」とメッセージを送っているからなのです。正しく言うと「開脚しないでほしい」のではなく「骨盤底を開かないでほしい」と言うメッセージなのです。
バレエやダンスをされている方ならすぐに理解できると思うのですが、骨盤は開いてはいけないのです。「骨盤が閉まるから足が開くのです。」
もし今まで開いていた股関節が痛みや張りのため開脚しにくくなっているという悩みを抱えている方がいらしたら、無理して開脚せずに骨盤底を閉めるケアが必要です。お近くの信頼できるカイロプラクターにご相談ください。

「骨盤の開き」考察①
「骨盤の開き」考察②

関節軸調整と寝違えのメカニズムについて

朝、目覚めると首が痛くて動かせない、一般的に言われる「寝違え」ですが、皆様もこの辛い症状を一度は経験されたことがあると思います。
この「寝違え」は経験がない人の方が少ないのではないでしょうか?朝起きて、首が回りにくくどちらかに回すと痛い為、身体ごと回すようにしている間に2-3日の間に徐々に緩和していくという症状です。2-3日で緩和していくので冷湿布をし放置しておく人が多いと思われます。
この「寝違え」ですが、このメカニズムは、関節軸が崩れ、関節の動揺性が急激に増した状態によって起こっていることが多いのです。

下図①の首をかしげてパソコンをしている女性ですが、いつもこのような体勢でパソコンをしているとします。その状態の時には問題ありません。しかし、長時間この姿勢でいたり、肩に力が入っていたりすると徐々に一方行への動揺性が発生しやすくなります。そしてその状態から戻そうとした時に、この関節が元の位置に戻れなくなります。
その状態が下図②の右側に関節が動揺した状態なのです。その時に身体の中で起こっているメカニズムが図③に示してあります。
マウスを使用している為、肩が前に出てその影響から肩甲骨から右の首の骨に付着している筋肉に伸長性の緊張が起こります。この緊張により首の骨は右外側への動揺性が高まります。(首の骨を引っ張り出すイメージです)
逆に左側では、左に首を傾げて電話をしていたので頭が左に傾き収縮性の緊張が起こっています。この両側での作用により右に動揺した第2頸椎の骨が戻れなくなるのです。
この時に頚椎での軸運動ができなくなり、首の動きが制限され、動くと痛みが走るのです。言い換えれば、このまま動くと首の骨が外に飛び出す力が増す為、脳が危険を察知しその動きを止めにかかるのです。それが筋肉の過緊張や炎症に繋がります。
この「関節軸の崩れ」を元に戻すのがKIZUカイロプラクティックで行っている「関節軸調整」なのです。この周りの筋肉は動揺するのを抑えて緊張しているのですから、動揺した頚椎を元に戻し軸をそろえれば筋肉の緊張は必要なくなるのです。それは正常の動きに戻ることを意味しています。正常の軸に戻した後にストレッチなどを行うべきなのです。
関節軸が崩れている状態で無闇にマッサージしたり、ストレッチしてはいけない理由がおわかり頂けると思います。
                   図1

                   図2

                   図3

ところでこの辛い寝違えですが、最近の寝違えは、症状がひどくなっている気がします。先日いらした方も、朝から痛み出し、首をどの方向にも動かせない状態で、歩行や呼吸でも首から背中に痛みが響くために、ゆっくり歩き、浅い呼吸しかできないのです。また肩甲骨や鎖骨への連動する影響から胸郭出口症候群を併発させ腕にしびれや痛みも出現させていたのです。

では、なぜ「寝違えが朝に起きるか?」ですが、「寝る姿勢」と「日頃の首や肩への負担」に影響されていると思います。寝る姿勢では横向き時やうつ伏せの時に多いのですが、これらの寝方をしてみると実感できます。左右の筋緊張が違うのがわかるはずです。特に高いまくらを使ったり、腕枕で寝ながらテレビを見ている時など特に筋緊張を作ります。日中パソコン使用で、首から肩にかけて負担をかけることにより徐々に頚椎の動揺性を作ってしまい、その夜そのような寝方をした時に起こると予想されます。
ここ数年、寝違えの頻度の多い方や、まったく動けなくなるような寝違えはパソコン使用頻度の増加による「マウス症候群」による影響も軽視できないと思います。

・関節軸調整について

・寝違え(急性頚部痛)の応急処置について

骨盤エクササイズについての警鐘

最近、巷では「骨盤体操」とか「骨盤ダイエット」というテーマで骨盤を閉める、コアを使う等のコンセプトの講習会やカルチャースクールが盛んに行われているようです。また同じようなテーマのDVDもよく売れているようです。そのような講習会やDVDによって「骨盤を閉めること」が簡単にできればいいのですが、残念なことにこの「骨盤を閉める」というエクササイズはとても難しいのです。
 きょうも骨盤コアエクササイズを行った女性が来院されました。この方が通っているカルチャースクールでは、約30名の生徒が受けていたようです。人気がありキャンセル待ちの状況らしいのですが、受講後というと腰の痛みなどになり受講を中断されている方が多いというのです。
この女性の症状は、太腿裏の痛みなのですが、検査してみると大腿の外側の筋肉が緊張し、骨盤の前側が開き、大腿内側と後ろの筋肉が防御的に働くために日常のちょっとした動きで痛みが太腿裏に放散していたのです。
受講中は鏡を見ながら先生の真似をしてコアを使おうとエクササイズしていたようなのですが、骨盤がねじれているため大腿の外側を使ってしまい、コアが上手く使えなかったのです。

骨盤を閉めるエクササイズは、骨盤の歪みを正してから、正しい指導の下行うべきです。また、見た目は一緒でもどこを動かそうと意識しているかで大きく違ってしまうので、DVDを見てなどは、自分のやり易いやり方で行ってしまいがちですので特に注意が必要です。
痛みや違和感があった場合、すみやかにエクササイズは中断してください。

以前取り上げた「骨盤の開きの考察」を参照にしてください。また「肩に力が入る・肩の力を抜く」で取り上げた丹田の使い方がコアトレーニングでは重要です。

骨盤のゆがみと慢性的な腰痛
肩に力が入る・肩の力を抜く
「骨盤の開き」考察①
「骨盤の開き」考察②

頭痛について② ーカイロプラクティック的アプローチ法ー

前回は頭痛の分類についてでしたが、今回は、頭痛に対するカイロプラクティックアプローチについてまとめてみます。

■頭痛へのカイロプラクティック的アプローチ
頭痛の治療においてカイロプラクターは頭痛原因を分析することに重きを置き以下のことを行います。

カイロプラクティック的検討対象となるプロトコル
1.病歴と検査結果に危険信号がないかチェックする。器質的頭痛を排除する。
2.頚椎を評価し、頭痛を起こす頚椎コンポーネントがあるか判定する。
3.側頭下顎関節(TMJ)を評価し、頭痛を起こす要因があるか判定する。
4.頭部外傷か血管原因の場合は排除する。
5.頭痛原因の可能性のある食生活要因を探す。
*適応症以外は、すみやかに専門医に紹介させて頂きます。

以上のプロトコルを通して原因を探し、頚椎のコンポーネント・側頭顎関節などの治療や 背骨・骨盤のアライメントや筋肉や関節などの問題を改善させて頭痛を軽減させる事が可能です。
カイロプラクティック治療は一次性頭痛に有効と言われています(特に緊張性頭痛や頚性頭痛)が、最近の臨床を通してわかってきたことは、原因が多岐にわたっている複合体が多いということです。
例えば、ストレートネックや上部交差症候群においても頭痛が発症する方が多いのですが、これはストレートネックや上部交差症候のような状態は、頚椎コンポーネント異常や筋緊張を作ってしまいます。またその筋緊張は、精神的なストレスから起きていることも考えられます。また、日常の習慣で作られた「その人独特の悪い姿勢と身体の使い方」も大きく影響する等、様々な要因が絡み合い、頭痛が起きるという機序になっているのです。
今や頭痛は真に隠れた流行病であることは明らかです。そして原因を特定することが難しい疾患の一つだと思います。どんな障害も同じなのですが、症状が憎悪する「何か」が存在します。
私の小学生のころの頭痛は、姿勢が原因で発症していました。
その「何をすると?」「どんな時」悪くなるのかを患者さん自身も理解しておく事が頭痛の根本的な解決に繋がるはずです。前回のコラムにあった「危険な頭痛の症状」も参考にして、専門医の検査を受ける事も必要だと思います。

頭痛日記を付けるのもいい考えだと思います。いつ痛みが出現したのか、薬や食事の時間などを記入しておくといいでしょう。

姿勢が気になる方は、以下にある簡単にできる姿勢調整法から始めてみましょう!

■簡単しせい調整法:
悪い姿勢で顎が上がった状態から自分の人差し指を下写真のように顎に当て、あごを引かせ、後頭部が天井に向かって少し上げるようにイメージします。連動する筋肉が自然に働くと上部交差症候群の姿勢を改善できます。パソコン使用中に時々(1時間に1回目安)この調整法を行うといいでしょう。


参考文献:
○日本頭痛学会(慢性頭痛診療ガイドライン):主任研究者 坂井文彦氏(http://www.jhsnet.org/) 
○頭痛大学サイト:(http://homepage2.nifty.com/uoh/
○Murdoch University Chiropractic and Sports Science (head/Cervical Spine Care) :Julian V.Vickers D.C.(SCUHS),Mark Hecimovich D.C.

「ストレートネックとは?」
「上部交差症候群」について
臨床ファイル:上部交差症候群による頭痛と肩こり