

 |
 |

 |
 |
 |
 |
 |
     |
 |
 |
 |

第37回 日本アルコール・薬物医学会総会開催によるセミナー


ーお酒と健康ー日本発・飲酒文化と健康のグローバルスタンダート
酒は天の美禄なり。
少し飲めば陽気を助け、血気を和らげ、食い気をめぐらし、愁いを去り、興を発して、はなはだ人に益あり。多く飲めば、またよく人を害すること、酒にすぎたるものなし。水火の人をたすけて、またよく人に災いあるがごとし。
人類最古の薬物とも言われるアルコール。昔から「酒は百薬の長」と言いますが、これを裏付けるように、最近、適量飲酒の長命効果が医学的に証明されてきています。それは、死亡原因で大きな割合を占める心臓病などに対する予防効果があるからです。適量のアルコールが血液中のHDL(善玉コレステロール)を増やし、高血圧や脳卒中などの原因となる動脈硬化を防ぐ為、まったく酒を飲まない人よりも死亡率が低いのです。 しかしこれはあくまでも「適量」の場合に限られます。飲み過ぎてしまえば「酒は百薬の長とはいえど、よろずの病は酒よりこそ起これ」(吉田兼好)と言われるように、急性アルコール中毒やアルコール依存症、肝臓を主とした臓器障害などの生活習慣病の原因となってしまいます。これはお酒のせいと言うより、お酒に対しての正しい知識が不足しているがための問題と言えます。そこで、今回はお酒に関しての知識を幾つか紹介します。
○酔いとは?
酔いとはアルコールにより脳の各部位が麻痺している状態の事を言います。麻痺している部位によって「酔い方」が異なり、まず理性をつかさどる大脳新皮質が麻痺すると本能的、感情的な行動を取ります。これが酔いの初期段階です。陽気になる爽快期、ほろ酔い気分になるほろ酔い期、気が大きくなる酩酊期を経て、運動の調節をつかさどる小脳にまで麻痺が広がると千鳥足状態になり、記憶の中枢である海馬が麻痺すると記憶出来ない(ブラックアウト)状態、つまり覚えていないと言う事が起こります。さらに脳全体が麻痺すると延髄も麻痺するため呼吸中枢も危ない状態になり、最悪の場合、死にも至ります。
○アルコールの処理とは?
口から入ったアルコールは胃と小腸で吸収され、血液に溶けこみ、肝臓へ運ばれます。肝臓ではアルコールを分解するアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解され、さらにアルデヒド脱水素酵素(ADHL)によりアセトアルデヒドを酢酸に分解し、最終的には炭酸ガスと水になります。肝臓で分解しきれないアルコールは心臓に送られ、脳を含む全身を巡り、再び肝臓へと戻って分解されます。 その処理能力は個人差があるものの、体重60kgの平均的な日本人が1時間で処理するのは純アルコール6.6g。これはだいたいビール大瓶1/3本、日本酒0.3合に相当します。つまりはビール大瓶1本、日本酒1合を処理するのに約3時間かかるのです。翌朝にお酒が残るのはこの処理能力以上の量を飲んだためです。
○酒の強い人、弱い人とは?
アルコールは肝臓でアセトアルデヒドに分解されるのですが、このアセトアルデヒドは毒性が非常に強い物質で、吐き気、頭痛などの不快な症状を引き起こします。このアセトアルデヒドを分解するのがアルデヒド脱水素酵素(ADHL)。1型と2型がありますが、実はこのADHL2型が働くか働かないかによって酒の強さが決まるのです。 ADHL2型は血中のアルコール濃度が低い時に働くのですが、日本人の40%は働きが弱い「低活性型」で酒に弱く、さらに4%は全く働かない「不活性型」で全く酒を飲めないと言われています。特に後者のタイプは、ごくごく少量の酒でも飲むことができません。
ADHL2型が不活性な人種はモンゴロイド系だけにしか存在しません。日本、韓国、中国、などに多くみられ、白人や黒人の間にはこの不活性型はみられないのです。 また、体重の重い人ほど血中のアルコール濃度が低くなるので、酔いは遅くなります。男女の差では、女性の方がアルコールの影響を受けやすく、依存症や肝臓障害の危険性が高いと言われています。なお、生理前は女性ホルモンの影響でアルコール脱水素酵素の働きが阻害されるため酔いやすく、悪酔いもしやすくなります。
○なぜ20歳から?
未成年の飲酒は法律で禁じられていますが、これにはきちんとした理由があります。 まず、脳の発達が妨げられること。発育途上の脳はアルコールの影響を受けやすく、萎縮が起きやすいためです。俗にアルコール痴呆とも呼ばれ、アルコールを絶つと徐々に戻ります。次に、アルコール依存症、肝臓などの臓器障害の危険性が非常に高いこと。大人の場合、男性で20年、女性で10年以上の大量飲酒を続けるとアルコール依存症の危険性が高まるのですが、未成年の場合には数ヶ月から2年ほどの期間で発症の危険があります。臓器障害は、未発達な臓器ではアルコールの耐性が弱いために、短期間で非常に大きなダメージをうけるためです。最後に、ホルモンのバランスの崩れ。アルコールによりホルモンが悪影響を受け、男性性器の未発達、女性の生理不順、無月経などを引き起こします。 未成年者が最初に酒を飲むきっかけは親の勧めによるものが多いようです。未成年でも少しぐらいならと寛容にならず、以上のような危険性があるという事を知って子供達を守っていきましょう。 ○危ない飲み方は? 代表はいっき飲み。なぜ危険かというとアルコール分解能力、つまりは自分の限界を無視して文字通りいっきに酒を飲むため、血中アルコール濃度が急速に高まり、自分でコントロール出来ないうちに脳が麻痺し急性アルコール中毒の危険性が高まるからです。 また、酔いは少し後になってやってくるため、いっきに飲むと知らず知らずに限界を超えてしまい、脳の麻痺が急激に広がって昏睡、死へと繋がる可能性もあります。
次に空腹時のアルコール摂取。これは度数の強いアルコールの場合は胃の粘膜をおかし、急速に体内に吸収されるため注意が必要です。食前酒はアルコール度数の低いものにしましょう。 酒だけを飲み続ける。よく何も食べずに酒だけ飲む、という人もいますがこれは体に非常な負担をかけます。肝臓に負担をかける脂物、血圧を上げる塩分の強い物は避け、バランスの良い美味な食事とともに、ゆっくり飲む習慣を心掛けましょう。 二日酔いの迎え酒、これも危険です。体がダメージを受けて弱っているところに追い討ちをかける事になります。多少楽になった気がしますが、これはまさに「気のせい」です。原因はただ単に飲み過ぎ。特効薬などはないので、昨日の酒量を後悔しつつゆっくり横になりましょう。
知っているようで、あまり知られていないお酒。これからの時期、飲む機会が増えてくると思いますが、飲み過ぎだけは、どうぞご注意を。
9月8日(日)慶応義塾大学にてセミナー受講して:明田清吾
 |
 |
 |
 |



少し飲めば陽気を助け、・・・多く飲めば、またよく人を害すること。まったくその通りです・・・なぜか、何度も同じ事を繰り返してしまいますね。
| |  |