■上部交差症候群による頭痛と肩こり


33歳女性
頭痛と肩こりが半年前より徐々に悪化する。一ヶ月前に激しい右後頭部痛に襲われる。その時は、鎮痛剤でしのぐ。しかし1週間前にも激しい頭痛に襲われ、耐え切れなくなり救急車を呼び入院する。脳のCT検査は陰性。頚部X線検査ではストレートネックとの診断。

精神安定剤と鎮痛剤を処方され飲んでいたが、効果ある時とない時が有り、昨日特に頭痛辛くなり来院する。

特に既往歴は無し、最近は眠りが浅く、仕事柄時間も不規則でストレスもたまっていた。忙しいと症状が悪化し、朝起きるとうつ伏せになっていることが有り、その時は余計に頭痛がしたとのこと。めまい・耳鳴りはなかったが、痛み強い時に多少の吐き気をともなった。

姿勢検査では頚椎の前傾、胸椎の後彎、腰椎の前彎が顕著である。筋肉の評価では肩甲挙筋、上部僧帽筋、斜角筋、後頭下筋、左腰部筋に緊張が強い。左肩甲挙筋と左斜角筋には2度の圧痛ある。
また頭皮にも引きつるような感覚もある。呼吸の評価では、浅い胸式呼吸をしている。
整形外科検査では、椎骨動脈圧迫や椎間板障害に関するテストはすべて陰性、筋力・知覚も問題なし、ROMでは頚椎伸展において、左右後頭部に痛み増強する。その他ROMは、全体的に可動域は減少しているが痛みはない。

整形外科での脳CT、X線検査や上記の検査結果より頚椎原性であることが予想された。
また、上部交差症候群に特徴的な筋緊張と圧痛(肩甲挙筋や斜角筋)が存在し、また典型的な姿勢もみられた。呼吸は通常呼吸でさえ胸式呼吸の兆候がみられた。
以上より、「上部交差症候群」による頚椎原性片頭痛の可能性が高いと判断し治療に当たる。

治療はまず頚椎・肩周辺の筋群にアプローチし連動する関節群に可動性を与えた。さらに安定させるために弱化した筋群(下部僧帽筋・前鋸筋・頚部前筋等)の強化運動を指導する。また、腰椎の前彎を取り除く為に骨盤の治療と足先から身体全体のコアトレーニングを実施する。
8回の治療で症状は緩和され、投薬なく日常生活を過ごせるようになる。
その後海外転勤になった為、呼吸法と自宅での体操を指導する。

今回の症例は、上部交差症候群が悪化した症状であり、投薬により症状を抑えていたため、原因である身体の筋・関節バランスをより崩したケースだと思われます。
このような状態になると自律神経のバランスも崩し、不眠、食欲不振、便秘、吐き気、頭痛、肩こり、首痛、ふらつき、呼吸の問題など様々な不定愁訴が出現し、悪循環に入ってしまいます。
マウス症候群でもよく見られる「ストレートネック」でも同様な状態が見受けられますが、この上部交差症候群では、特徴的な筋の使い方があります。それは弱化した筋と硬縮した筋が交差して起こっていることです。



*図引用:脊椎のリハビリテーション臨床マニュアル 原編著者:Craig Liebensonほか

硬縮筋:胸筋、上部僧帽筋、肩甲挙筋
弱化筋:下部僧帽筋、前鋸筋、頚部前筋
この硬縮と弱化する筋が交差している為にその名称がつけられています。

最近、臨床でこのような筋バランスの患者さんを多く見受けます。 上図の典型的な姿勢になり、先ほどのような症状がみられた場合、上部交差症候群の可能性がありますので、早い段階で専門医やカイロプラクターに診てもらうことをおすすめいたします。

(担当:MAIN 木津直昭)

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